オープンウェイトの R1 と V4 を手がける中国の AI ラボ DeepSeek が、第2ラウンドの交渉を再開したと報じられています。目標調達額は約500億元(約70億ドル)、投前評価額は約5000億元(約700億ドル)で、2か月前の初回ラウンドから約43%の上昇です。成立すれば、5か月弱で累計140億ドル超を調達したことになります。本稿ではタイムライン、数字、特異なキャップテーブル、競合比較、そして未確認の点を整理します。

タイムライン:4か月で「資金調達なし」から約700億ドル評価へ

  • 2026年4月:企業登記の変更で、DeepSeek は登録資本を増額し、創業者の梁文鋒(Liang Wenfeng)が新規株式を個人で引き受け、直接持分は1%から34%へ上昇しました。支配下の事業体と合わせると運営会社への支配比率は約84.29%に達し、これが後の外部資本の入り方を規定する所有構造になりました。同月、DeepSeek は初の外部調達ラウンドを開き、V4 シリーズをプレビューしました。
  • 2026年6月:初回ラウンドが約500億元(約74億ドル)でクローズし、ポストマネー評価は3500億元超(報道により520億〜590億ドルの幅)——中国 AI 史上最大級の初回調達となりました。梁氏が個人で200億元を拠出し、Tencent が100億元、CATL が50億元、さらに JD.com、NetEase、IDG Capital、国家 AI 産業投資基金などが参加したと報じられています。
  • 2026年7月14〜17日:複数メディアが、DeepSeek が上海 STAR Market(科創板)IPO の準備を始め、同時に投前約710億ドル(約4800億元)の第2ラウンド交渉に入ったと伝えました。初回ポストマネー比で約37%上です。この時期に、ARR(年換算売上)が約4〜5億ドル——主に API トークン利用——と初めて公に報じられました。
  • 2026年7月25〜26日:第2ラウンド交渉が突然停止。Bloomberg などによると、梁氏がクローズドな投資家ミーティングでの発言がネットに広がったことに不満を示し、DeepSeek は待機リスト上の一部投資家に署名を見合わせるよう伝えたとされます。
  • 2026年8月4〜5日:中国ビジネス誌 Caijing が引用したディールメーカーによれば、ラウンドは再開され、なお目標500億元・投前約5000億元(約700億ドル)で、8月下旬の署名が見込まれています。DeepSeek と投資家の双方が、今回は低姿勢で進めたい意向だと報じられています。

注意:第2ラウンドに関する金額・評価額・日程はいずれも、中国金融メディアが匿名のディールメーカーを引用した報道に基づきます。DeepSeek の公式発表ではありません。署名前に条件は変わり得ます。

数字の一覧

ラウンド1(成立済)ラウンド2(交渉中)
交渉開始2026年4月7月中旬に再開、停止後、8月4〜5日に再再開
成立/予定2026年6月2026年8月下旬(予定)
調達額約500億元(約74億ドル)目標 約500億元(約70億ドル)
評価の基準ポストマネー 3500億元超プレマネー 約5000億元(約700億ドル)
評価の上昇ラウンド1比 約+43%
主な出資者国家 AI 産業投資基金、Tencent(100億元)、CATL(50億元)、JD.com、NetEase、IDG Capital、Loyal Valley Capital、Shixiang Capital などラウンド1の次点投資家+既存出資者の増額
ラウンド2成立時の累計5か月弱で1000億元超(約140億ドル)
指標注記
年換算売上(ARR)約4〜5億ドル主に API トークン利用。メディア報道で、公式開示ではない
粗利率50%超と報じられる独立監査による確認なし
暗示的な売上倍率(P/S)約140〜150倍OpenAI 約65倍、Anthropic 約21倍との対比(ディールメーカー推計)
月間アクティブユーザー1億超(外部報道)計測方法は非開示

ディールの内側:計算と議決権がきれいに合わない理由

本当の請求書は計算資源です。初回ラウンド成立直後、DeepSeek はデータセンターと AI エージェント部門の人員を倍増すると表明し、Reuters は自社 AI 推論チップ向けにチップ設計エンジニアを採用中だと報じました。業界アナリストの見立てでは、調達100億元のうちおよそ70億元がチップ、データセンター、帯域、液冷といった計算関連支出に直行します。調達のテンポは評価額の自慢ではなく、自社の計算インフラ拡張に追いつく競争です。

大半の投資家には議決権がありません。初回ラウンドでは、外部資本の多くが梁氏支配下のリミテッド・パートナーシップ経由で入り、議決権なし・5年ロックアップでした。例外は国家 AI 産業投資基金で、直接出資により議決権がありロックアップもありません。この構造により梁氏の支配は約84%近くに保たれます。Forbes などが、世界のユーザー基盤を抱えつつ特異なキャップテーブルと国家との関係について懸念を指摘したのも、まさにこの種の詳細です。

P/S 約148倍は将来への賭けか、警告信号か。投前700億ドルに対し ARR 4〜5億ドルなら、暗示的 P/S は約140〜150倍で、OpenAI の約65倍や Anthropic の約21倍を大きく上回ります。中国報道で紹介されたディールメーカーの見方は率直です。「基盤モデル企業の値付けは本質的にオプションへの賭けであり、キャッシュフロー評価ではない」。投資家は今日の売上ではなく、DeepSeek が中国の計算エコシステムとエンタープライズ・エージェント市場でインフラ級になる可能性に価格を付けています。

Moonshot、Zhipu、MiniMax、そして OpenAI/Anthropic との比較

企業上場状況最新評価/時価総額報道 ARR最近の調達ペース
DeepSeek未上場、STAR Market IPO 準備プレマネー約5000億元(約700億ドル、交渉中)約4〜5億ドル4か月で2ラウンド、合計140億ドル超を目標
Moonshot AI(Kimi)未上場約200億ドル(2026年5月)。後続交渉で300億ドルを模索との報道も約2億ドル6か月で4ラウンド、累計約39億ドル
Zhipu AI(Z.ai)上場(香港)時価総額約3500億元(2026年5月)非開示IPO 前に約83億元を調達
MiniMax上場(香港)時価総額約2100億元(2026年5月)非開示IPO 前に約110億元を調達

パターンは明確です。まだ未上場の DeepSeek と Moonshot はいずれも P/S 約140〜150倍で、すでに上場した Zhipu と MiniMax のセカンダリー水準を大きく上回ります。プライベート市場の投資家は、公開市場の検証をまだ受けていない2社に、当面はより高いプレミアムを払っています。モデル側のペースは、DeepSeek V4 Flash のベンチマークと価格解説およびQwen3.8-Max リリース解説もご覧ください。

論争:漏れた議事録、不満の創業者、バブル警告

  1. 漏れたクローズド・ミーティングが取引を止めました。7月の一時停止の直接要因は、梁氏が初回ラウンドの投資家会合での発言がオンラインに広がったことへの不満だったと報じられています。投資家ベースが広がるほど、低姿勢を保つのが難しくなるという警告でもあります。
  2. 議決権構造が外部の精査を招いています。大半の外部投資家は議決権なし・5年ロックアップで、直接の議決権とロックアップ免除があるのは国家支援の国家 AI 産業投資基金のみです。Forbes や CIW などの報道を超える検証はなく、国家影響力と創業者支配をめぐるガバナンス上の問いについて、DeepSeek は公に答えていません。
  3. 評価額と売上のギャップは未解決です。P/S 140〜150倍はどの業界でも極端で、高成長 SaaS のトップでも通常は30〜50倍です。この評価が持続するかは、STAR Market 上場後に技術リードをスケールした企業売上へ転換できるかにかかっており、市場はまだ検証していません。「AI 評価バブル」論争のリアルタイム事例でもあります。

明確にしておきます。ディール規模・評価額・所有構造に関する上記の詳細はすべて、匿名ソースに依拠する報道(Caijing、Reuters、Bloomberg、Forbes など)に由来します。DeepSeek は第2ラウンドの条件を公式に確認していないため、正式発表までは「報道ベース・未確認」として扱ってください。

なぜ重要か:STAR Market ルール変更、計算自立、世界の AI 資金調達競争

  • 中国は未黒字 AI 企業の上場ルールを書き換えました。2026年6月17日、上海証券取引所は陸家嘴フォーラムで、STAR Market の「第5上場基準」を AI 企業にも拡大すると発表しました。黒字や大規模売上がなくても、技術力が十分なら申請可能という意味です。DeepSeek が2026年末までの IPO 申請提出(2027年上場目標)を現実的にする規制上の背景です。
  • DeepSeek は5年続いた「資金調達なし・IPO なし・商業化なし」方針を捨てました。長年、DeepSeek は創業者梁氏のクオンツ・ファンド High-Flyer だけが資金を出し、外部資本を拒んできました。その方針は2026年6月の初回ラウンドで終わりました。Zhipu と MiniMax はすでに香港上場し、Moonshot も加速して調達を続けており、中国 AI セクター全体の象徴的な転換点です。
  • 世界的なフロンティア AI ラボの再値付けの一部です。OpenAI は2025年に3000億ドルと評価されたと報じられ、Anthropic の評価は2026年6月までに OpenAI を上回ったとも伝えられます。その背景では、技術で並走しつつ巨大市場に届く中国ラボへの高プレミアムも、一種の賭けです。
  • 計算の自立がサブテキストです。自社 AI 推論チップ開発や自前データセンター拡張の報道は、先端モデル開発と国内計算・チップ戦略を束ねる中国大手ラボの潮流と一致し、売上規模が相対的に控えめでも、これほど速く・頻繁に調達が必要な理由も説明します。

引用可能な数字とソース

  • ラウンド2交渉:目標調達 約500億元、プレマネー 約5000億元(約700億ドル)、署名は2026年8月下旬予定(Caijing が複数ディールメーカーを引用。Sina Finance などが転載)。
  • ラウンド1成立:約500億元(約74億ドル)、ポストマネー 3500億元超(金融・国際メディアで幅あり)。
  • 売上と倍率:ARR 約4〜5億ドル。ラウンド2の暗示的 P/S 約140〜150倍。対して OpenAI 約65倍、Anthropic 約21倍(ディールメーカー推計。公式開示ではない)。
  • キャップテーブル:梁氏の支配 約84%。外部資本の大半は創業者支配 LP 経由で議決権なし・5年ロックアップ。例外は国家 AI 産業投資基金(メディア報道)。

検証可能な第三者・技術ソースは以下です。ディール数字は正式発表まで未確認として扱ってください。

Sina Finance による Caijing 転載:DeepSeek が第2ラウンドを再開、プレマネー約5000億元

Gate News: DeepSeek reopens second funding round

DeepSeek 公式 API ドキュメント

Hugging Face DeepSeek モデルカード(V4 技術背景)

FAQ

DeepSeek の第2ラウンドはすでにクローズしていますか?

いいえ。本稿執筆時点ではまだ交渉中で、2026年8月下旬のクローズを目指しています。最終的な金額と条件は、現在の報道と異なる可能性があります。

なぜ初回の直後にまた資金を調達するのですか?

データセンター、自社 AI チップ、エージェント/インフラチームの人員拡大を急速に進めており、初回調達で賄いきれない設備投資が続いている——というのが複数報道の説明です。

約700億ドルの評価額は確定していますか?

いいえ。主に Caijing が匿名引用したディールメーカーの数字であり、DeepSeek の公式表明ではありません。合意署名前に変わり得ます。

この評価は投資家がより強く会社を支配することを意味しますか?

必ずしもそうではありません——それが論争の一部です。初回では大半の外部投資家に議決権がなく5年ロックアップで、直接の議決権があったのは国家 AI 産業投資基金のみです。ガバナンスと国家影響力の問いは未解決のままです。

DeepSeek はいつ上場し、海外投資家は買えますか?

DeepSeek は2026年末までに上海 STAR Market への申請提出を準備し、2027年の上場を目指していると報じられています。STAR Market は中国本土の市場のため、個人の海外投資家のアクセスは接続プログラムなどを通じた間接的なものになりやすく、現在のプライベート・ラウンドへの直接参加は機関投資家に限られます。

DeepSeek の第2ラウンドは、計算インフラ拡張と調達テンポの緊張をはっきり見せます。モデル側の価格性能が高くても(V4 Flash ベンチマークと価格解説参照)、チームはローカル・エージェント、ツールチェーン、ハーネス選択を検証する専用環境をなお必要とします。共有 GPU クラスタはきれいにリセットしにくいことが多いです。オンデマンドで再イメージできる専用 Apple Silicon マシンの方が制御しやすい場合があります。VMSPIN の日単位クラウド Mac miniは MDM 自動プロビジョニングと SSH + VNC に対応し、短期ベンチマークやマルチスタック比較に向いています。Mac mini M4 レンタル解説料金ページで保有コストをあわせて試算してください。